日本経済への影響の中でも、とくに懸念されるのは産業の空洞化だ。電気料金の上昇で国内生産を縮小し、海外に工場を移転する動きが加速する恐れがあるからだ。アベノミクスによる金融緩和で超円高は修正されたが、電気料金引き上げが国内生産の新たなハードルになりつつある。これを裏付けるように経団連が昨春行ったアンケートによると、電気料金アップの影響などもあって約5割の企業が「生産や国内設備投資を減らす」と回答。約3割は「海外での設備投資を増やす」と答えた。日本企業の目は確実に海外へ向き始めたといえる。
企業の海外移転は、暮らしを支える雇用も国内から流出することを意味する。日本総合研究所の藤波匠主任研究員は「自動車関連などは産業の裾野が広い。そうした産業が国内生産を縮小すれば、日本経済への打撃は極めて大きい」と警鐘を鳴らす。
電気料金の値上がりは、原発停止で火力発電の主力燃料である液化天然ガス(LNG)の調達費用がかさんでいるためだ。原発の代替電源として火力発電がフル稼働していることに加え、円安や燃料価格の上昇なども料金の押し上げ要因になっている。
産業界では政策支援を求める声も強まっている。日本鉄鋼連盟などの業界団体は昨年6月、省エネ設備に対する補助金拡充などを政府に求めた。LNGの調達費用を減らすには調達先拡大も必要になるが、いずれの対策も効果が出るまでには時間がかかる。今年6月に経団連会長に就任することが決まった東レの榊原定征会長は「安全を確認した原発は、可及的に速やかに稼働してもらうことが国益にかなう」と強調している。