韓国の仁川アジア大会でカメラを盗んで略式起訴され、日本選手団から追放された競泳男子平泳ぎの冨田尚弥選手(25)が6日、名古屋市内で会見を開いた。代理人弁護士が会見前に報道陣に弁明書を配布した。
それによると、「冨田選手は9月25日昼、何者かに左手首をきつく掴まれ、顔を左向きにして後ろを振り返ると、面識のない男性が冨田選手のバッグのファスナーを開け、大きくて黒い塊を素早く入れた。冨田選手はとても混乱しており、黒い塊が何であるのか、咄嗟には理解できなかった。その後、仲間と選手村のバスに乗ったが、黒い塊はゴミだと思っており、部屋へ戻って水着を乾かすためにバッグを開けたところ、黒い塊がカメラであることを知った」としている。
そして、「韓国警察に事情聴取された際には、警察官から『事実関係を争ったら帰国できなくなる』と言われ、真実を述べることに対する怖さがあり、男性のことは話せなかった」という。
韓国警察の証拠となった防犯カメラの映像は、日本オリンピック委員会(JOC)職員が確認し、当時冨田選手も「カメラを見た瞬間、欲しくなった」と供述して認めたとされる。
仁川地検は9月29日に窃盗罪で罰金100万ウォン(約10万円)の略式起訴処分とし、冨田選手は即日納付して被害者と示談が成立している。日本水連では、防犯カメラの映像を確認していないが、事件の経緯と韓国警察の調査、JOCからの報告に基づき、2016年3月末まで選手登録停止とする処分を決めた。期限としていた2週間以内に冨田選手側からの不服申し立てはなかった。