再稼働の遅れが懸念される九州電力川内原発1、2号機=鹿児島県薩摩川内市【拡大】
■政府目標へ早期再稼働と寿命延長必要
3月18日夜、九州電力佐賀支社(佐賀市)で、瓜生道明社長は詰めかけた報道陣にこう打ち明けた。
「『彼』は、九州で初めて原子力の火をともした。こういう結果になったのは忍びない…」
「彼」とは、この日に廃炉が決まった玄海原発1号機(佐賀県)のこと。瓜生社長にとって、九電に入社した1975年から運転を開始し、電力供給を支え続けた玄海1号機はいわば同期の“戦友”。自らの最終判断で引退させる無念さからか、思わず「彼」と呼びかけたようだ。
◆審査と差し止めの壁
東日本大震災後、原子炉等規制法は原発の運転期間は原則40年、運転延長ができても最長20年と定めた。ただ、原子力規制委員会が策定した新規制基準に対応するには、1000億円規模の費用が必要だ。玄海1号機に加え、関西電力美浜1、2号機(福井県)、日本原子力発電敦賀1号機(同)、中国電力島根1号機(松江市)の計5基について、各社は、再稼働できたとしても採算に合わないと判断。今月27日から順次、設備の廃止に入った。
それでも、電力各社はすべての原発の40年超運転をあきらめてはいない。「安全性が確認されれば、運転延長していくのが基本的な考えだ」。電気事業連合会の会長も務める関電の八木誠社長は17日の記者会見で、こう言い切った。
2030年時点のエネルギーミックス(電源構成比率)について、政府は震災後に全基停止した原子力を20~22%とする方針を固めた。これを達成するには、国内43基の原発の多くを再稼働させたうえで、“寿命”を60年に延ばすことが必要だ。