越智小枝さん【拡大】
「地元の文化の有無が最も大きい差かもしれません。例えば、高齢者の方が季節の楽しみにしてきた山菜を食べないことがストレスになる場合もあります。食べる、食べないは個人が選択すべきだというのが私の考えですが、どちらが正しいのかという視点で報道されていることが多いように感じます。原子力発電も、放射線もそうですが、正か負の二極化の議論をされてしまうのは問題です。しかし、福島の人たちは放射線に対して二極化しない考え方ができるようになってきています。それを外の人にもわかってもらいたいと思います」
--原発の再稼働には反対する声もありますが、今後の日本のエネルギーはどうあるべきとお考えですか
「私の専門領域をはるかに超えた話で自分が決める立場にもないわけですから大きなことはいえませんが、医療も原発も『人々を幸せにする』という目的は同じです。電気料金が上がれば社会的弱者ほど逼迫(ひっぱく)される度合いが大きくなるわけで、社会全体として豊かさを維持するためには原発再稼働という選択肢に至るのかもしれません。しかし、他にも同時に日本がやらなければいけないことも多いと思います。東京の実家まで夜に車で帰ると、やはり東京のきらびやかな明かりには何か行きすぎたものを感じてしまいます。日本の豊かさには過剰な豊かさもあります。世界的な競争原理の中ではむずかしい部分もあるとは思いますが、やはり過剰なエネルギー消費を抑えることも必要です。また、医者の立場からすると、エネルギー問題が必ずしも健康問題に寄り添ってくれないもどかしさを感じています。人々を幸せにする手段の1つが原子力であるというなら、福島では放射線は全体の健康問題の中の1つですから、原発事故から派生した健康問題を包括して捉えるべきで、そうすることで初めて原子力を考えることになります。