米原子力大手ウェスチングハウス(WH)を傘下に置く東芝=本社ビル(東京都港区)【拡大】
衆院経産委員会メンバーの国会議員が、「海外とのモノやサービスの取引、投資収益状況を示す経常収支は黒字だが、モノの輸出から輸入を差し引いた貿易収支は赤字続きで、わが国の稼ぐ力の低下に歯止めがかからない」と景気に深い懸念を示した。
◆自動車頼みの日本経済
2014年度、円安や外国人旅行者の増加などを背景に、経常収支は前年度比5.3倍の7.81兆円の黒字を記録した。米国向け自動車の輸出増と円安で輸出額が伸び、原油価格下落による輸入額減少が見られたものの、貿易収支は9.13兆円の赤字(4年連続)を記録。日本経済が「自動車一本足打法」といわれるゆえんだ。
また、日銀短観の景況感は、今年3月時点で「足踏みが続いている」という控えめな評価だが、日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(3カ月ごとの世論調査)をみると、昨年9月まで1年前と比べて景気が良くなったという人が10%台を維持していたのに、昨年12月以降は1桁に低下、今年3月調査ではわずか7.0%だ。
「1年前と比べて景気が悪くなった」という人は昨年6月までおおむね20%台だったが、昨年9月以来30%台に増え、しかも今年3月調査では31.6%と、景気が良くなったという人を大幅に上回った。生活者の認識はこの厳しい結果の方が実態を的確に表していると考えられる。
一方、アベノミクスの第1の矢の金融政策はA評価、第2の矢の財政政策はB評価、第3の矢の成長戦略はE評価とされ、評価は総じてABEだと揶揄(やゆ)されるが、わが国の稼ぐ力を増すには今、改めて地方創生にもつながる成長戦略の再構築が急務だ。