米原子力大手ウェスチングハウス(WH)を傘下に置く東芝=本社ビル(東京都港区)【拡大】
すなわち、自動車ばかりに頼るのではなく、わが国の持ち味を生かした次なる戦略商品を掲げ、民間発想の「選択と集中」で展開することが、わが国の発展要件として重要だ。
結論を先に述べると、その戦略商品は原発輸出と鉄道輸出ではないか。新幹線はタイで日本政府が保証した低利融資が功を奏して受注に成功したが、発電段階で二酸化炭素(CO2)を発生しない原発は1基、数千億円にも上る地球環境保全面で優れた電源である。
年末にパリで開かれる「気候変動枠組み条約第21回締約国会議」(COP21)では、20年以降の温室効果ガス排出量削減の新しい枠組みで合意を目指す。この地球環境の年のなかで、原発の普及拡大自体が国際貢献であるとともに、原子炉製造が北海道・室蘭の伊藤博文開業の電炉工場の稼働率向上につながるなど地方創生面での効果も少なくない。
◆福島事故の原因は津波
政治的に厳しい見解があるほか、日本の原子炉に懸念を示す人もいるが、福島事故の原因が地震ではなく、津波であることが原子力規制委員会の追加調査などで明確になった以上、津波対策を整備することが責務であるものの、高度な原発技術を持つ日本にとって戦略商品であるのは間違いない。
再生可能エネルギーというオプションもあるが、かつてドイツが太陽光発電装置の製造シェア拡大に動いたが、中国にとって代わられた教訓を忘れてはならない。一方、米国は1979年のTMI(スリーマイル島)事故以降、半年足らずで再稼働を実現したが、長く新規建設が途絶えたため国内の新設技術が枯渇、単独で輸出する実力はない。