米原子力大手ウェスチングハウス(WH)を傘下に置く東芝=本社ビル(東京都港区)【拡大】
フランスは世界一厳しいフィンランド規制当局の影響などで最新鋭の原発EPRの建設が難航したために政府出資8割の国営企業アレバが経営破綻にひんしている。英国では低炭素電源として英・仏・中の協力で原発新設計画が進行中だが、仏の資金難発生の中で中国資本が出資増とともに中国炉の採用を働きかけていると聞く。韓国はアラブ首長国連邦(UAE)の原発を受注しているが、増設分にもアプローチしている。
日本はトルコやベトナムへの輸出に名乗りを上げているとはいえ、ぼやぼやしている暇はない。パートナーのアレバが破綻した三菱重工の負担は今後増えるだろう。英国やリトアニアで新設を狙う日立製作所も中国資本との競合が激化。東芝も傘下のウェスチングハウス(WH)の動きを把握できていないと聞く。
わが国企業の厳しい実情も踏まえ、特に英国とアジア等での原発新設、鉄道輸出についてわが国が中国・韓国の後塵(こうじん)を拝することのないよう、政府によるトップセールスと金融支援を期待したい。
なお、国の「発展要件」もさることながら、国の「存立要件」の確保さえおぼつかない実情も指摘しておきたい。自民党幹部は、自民党本部の会合で「原子力規制委員会が改革できず、ぐずぐすと審査を続けると、原発再稼働は毎年1基か2基だろう。それでは全基再稼働に2036年までかかり、電気代が上がって追加燃料費として50兆円もの国富が海外に流出する。こんな非合理非効率なことを続けたら日本は必ず滅ぶ」と発言した。国の総合的な存立要件の整備は、少なくとも安保法制議論と同程度に重要な問題・課題ではないか。(芝一太郎)