共同研究グループは、これまでの研究で使われていた磁場、電流、熱といった外部刺激ではなく、外から力が加わるときに物質が元の形状を保とうとする力である「応力」に着目し、スキルミオンの生成と消滅を試みた。マンガンとケイ素の合金に対して、応力を変化させながら振動磁場を加えたり、中性子を照射したりして磁気的性質を調べたところ、数十メガパスカルという小さな応力でスキルミオン相を生成・消滅できることが分かった。スキルミオン1個の生成・消滅に必要な応力は1~10マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)程度と極めて微小な力だ。原理的には走査型プローブ顕微鏡を用いた単一スキルミオンの力学的制御も可能となる。この成果は、スキルミオンを用いた次世代型磁気メモリの開発の新たな指針になるものと期待できる。
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【プロフィル】新居陽一
にい・よういち 2012年東北大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員PD、理化学研究所特別研究員を経て、15年7月から東京大学助教。
■コメント=ユニークな測定系およびデバイスの構築と、それにより初めて顕在化する新しい物性現象の開拓に興味がある。
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