◆授賞式の日も“格闘”
「強い意志を持ち、知識をどんどん吸収する」
山中は高須の実務能力を高く買う。一見おっとりした印象を与える物腰だが、一度モチベーションに火がつくと、とどまるところを知らない情熱が持ち味だ。
一方、高須からみた山中は「判断が速くて的確。悔しいぐらい、すごいリーダー」。同時に怖い上司でもある。仕事の詰めが甘いと必ず見抜かれるため「今でも報告の前におなかが痛くなることがある」と笑う。
知財の業務はいわば縁の下の力持ちだ。研究者の話を聞き、論文を読み、書類をまとめる地味な作業。決して表舞台に立つことはないが、いかに優れた研究も特許で失敗すれば社会に貢献することはできない。
12年12月、ノーベル医学・生理学賞に輝いた山中がスウェーデン・ストックホルムで開催された授賞式でスポットライトを浴びているときも、高須は日本で書類の山と格闘していた。
◆研究以外の全て担う
高須はいま、知財の業務を後進に引き継ぎ、12年にスタートした「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」を手掛ける医療応用推進室を率いる。iPS細胞による再生医療の実用化へ向けて山中が最も重視する取り組みだ。
山中は、知財の確保に一定のめどがついた段階で、次なる最重要課題を高須に託した。再生医療では、患者の皮膚や血液からiPS細胞を作れば移植するときに拒絶反応はないが、作製に数カ月かかり、移植や治療に間に合わないこともある。患者ごとに作ると費用も膨大だ。そこで、あらかじめ拒絶反応が起こりにくい特別なiPS細胞を作って備蓄し、迅速で安価な提供を可能にする仕組みが必要となる。iPS細胞を使った治療の普及の鍵を握るといっていい。