COP21でのパリ協定採択を喜ぶフランスのオランド大統領、ファビウス外相、潘基文国連事務総長ら(右から)=12日、パリ郊外(AP)【拡大】
わが国ではもんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故を起こして以来、止まったままだが、ロシア、フランス、中国などは先を争って高速増殖炉開発を進めている。特に、ロシアはBN600.BN800.BN1200というステップで開発を進めており、フランスも技術実証炉としてアストリッドという60万キロワットの高速増殖炉を開発中で、2019年に建設判断をして、25年完成を目指す計画だ。13年6月の日仏首脳会談でも共同開発するとの共同声明を発表している。
一方、現在の一般商業炉である軽水炉を活用し、ウラン資源の節約をはかるという「軽水炉サイクル」は、フランス・ベルギー・英国の他、ドイツなど脱原発国でも実用化されており、わが国も福島事故以前に既に実用化している。現在安全審査中で18年上期竣工(しゅんこう)予定の六ケ所再処理工場は軽水炉サイクルの中の中核施設である。しかも、13年5月にほぼ完成し、エネルギー総合工学研究所が同年秋に「再処理工場全体として安全運転に向け、準備が整っている」という評価結果を公表した。
なお、高速増殖炉サイクルと軽水炉サイクルとは接点がないわけではないが、基本的に別システムだ。一部のジャーナリストが「もんじゅが廃炉になれば、六ケ所再処理工場も不要でおしまいになる」と論じているが、科学的誤りの最たるものだ。
また、原子力規制委員会の田中俊一規制委員長が11月13日の記者会見で「世界でもほとんど高速炉の研究というのは余りやっていません」との発言は、原子力政策を左右する立場にある原子力規制委員長として不適切だ。
地球環境問題への対応は、無知や不勉強を排し、科学の視点で問題を直視してもらいたい。それがCOP21の残した教訓だ。(芝一太郎)