男児の成長を祝い、端午の節句に飾られる五月人形が「カワイイ化」している。かつては、勇ましいイメージの大将飾りが好まれたが、最近は3頭身の「赤ちゃん顔」が主流になった。背景には、大きいサイズの人形が置けないという近年の住宅事情のほか、選択権を握った母親の「勇ましい顔立ちは怖い」という声があるようだ。
「ボクはカブトと一緒に強くなる」。西武池袋本店(東京都豊島区)は今年の五月人形のパンフレットに、こんなキャッチフレーズを添え、かわいらしい顔立ちの大将飾りを表紙に据えた。五月人形売り場を担当する同店こども部の森淳一係長は「よろいの勇ましさと顔立ちのかわいらしさ、その両方が欲しいという声が多くなっている」と説明する。表紙の「カワイイ」大将飾りは、商戦がピークを迎えた3月末、いち早く完売したという。
300年の歴史がある人形専門店、吉徳(台東区)でも、今年取り扱っている大将飾りのほとんどがかわいらしい顔のもの。同社広報室の平沢真課長は「従来は初陣を迎える青年をイメージした勇ましい表情が主流だった。だが、ここ数年は全国的にそうした表情の人形は取り扱わなくなった」と話す。