その結果、長期的には対人類の優位性が確立されるというAI必勝の図式が成立してしまう。囲碁で棋士を制したAIは、人間の脳の神経回路を工学的に模していて、大量のデータを自ら学習して賢くなる機能を備えている。約30年後には全人類の知能の総和をAIが上回るという予測がある。これが「2045年問題」で、知の世界のクリティカルポイントだ。
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次の段階でAIが意識を獲得すれば、人類は「知の頂点」の座から外れる。
知的存在として位置づけるなら、ホモ・サピエンスに続く、ホモ・AIエンシスの出現に等しい階梯であろう。
海から陸へと進出した生命進化の流れをたどれば、次の舞台は宇宙空間だ。真空と無重量という宇宙の極限環境に適応できるのは人間ではなくAIロボットだ。彼らはポストヒューマンの新知的生命体としての要件を備えている。
そうしたAIは当然、自己存続を図る。その目的に有害とみられる人物は、容赦なく排除されることになるだろう。
銀行口座を凍結され、スマートグリッドで送電を止められるだけで、人間は手も足も出なくなる。マイナンバーもAIによる個人の捕捉を容易にするお膳立てだ。
人類社会は、AIによって崩壊するかもしれない。それほどの危機意識が必要な事態なのだが、われわれの認識はあまりに甘い。既にAIの虜となっている証しか。