今回の小型ロケット打ち上げで、国は需要増加が見込まれる超小型衛星の利用を加速し、宇宙ビジネスの拡大につなげる構えだったが、思わぬ失敗で戦略に水を差す事態となった。
最小で10センチ角ほどの超小型衛星は安価で短期間に製作できる利点があり、大学教育や地球観測などの分野で利用が広がっている。
大型衛星との相乗りで主力ロケットH2Aに搭載したり、物資補給機「こうのとり」で国際宇宙ステーション(ISS)に運び宇宙空間に放ったりする方法があるが、打ち上げ時期や軌道の制約が大きい。小型ロケットで機動的に打ち上げれば運用の機会が増えるため、結果が注目されていた。
今回のロケットは専用部品を減らし、家電や携帯電話に使う民生品を活用。製造と打ち上げ費用は計約5億円で「けた違いの低コスト化」(経済産業省)を目指した。この技術を民間が取り入れ、宇宙開発の裾野を広げる狙いがあった。
政府は宇宙基本計画にも超小型衛星の活用推進を盛り込んでいる。途上国が災害監視などに利用することも見込んでおり、日本が打ち上げを先導して後押しすることを目指してきた。
今回の失敗は技術が異なる大型ロケットの運用に影響を与えることはないが、国が成長戦略として掲げる宇宙産業の育成の懸念材料となりかねない。