【視点】ゲノム編集 人類が生物進化の創造主に 産経新聞論説委員・長辻象平 (1/3ページ)

2017.2.21 05:00

 日本国際賞の今年の生命科学分野の受賞者に「ゲノム編集」の最新技術「クリスパー・キャス9」を開発した2人の女性研究者が決まった。

 独マックス・プランク感染生物学研究所長のエマニュエル・シャルパンティエさんと米カリフォルニア大バークレー校教授のジェニファー・ダウドナさんだ。

 ゲノム編集は、生命の設計図にあたるDNAの遺伝情報を迅速、確実に書き換える技術として脚光を浴びている。今年のノーベル賞の可能性もあるだろう。

 「遺伝子組み換え」と似ているが、組み換えは植物に動物の遺伝子を入れるなど外部の遺伝子を挿入するのに対し、ゲノム編集は目標の遺伝子の削除に主眼を置いていることが基本的な相違点だ。

 最大の相違は効率だろう。遺伝子組み換えでは青いバラの作出に十数年を要したように、時間がかかったり、思うような効果が現れなかったりすることが多かった。

 ゲノム編集を使えば、そうした改変にかかる期間を大幅に短縮できるのだ。この時間の差が決定的な意味を持つ。

 交配や放射線照射による突然変異を利用する品種改良とは次元が異なる。弓矢とミサイルほどの差があろう。病気の治療など医学分野においても、遺伝子組み換えを圧倒することは確実だ。

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