
上空から見た浦山ダム(本社ヘリから)【拡大】
■首都圏の水需要支える
◆利根大堰
江戸時代初期から利根川中流域の左右岸から取水していた8つの農業用水が、河床低下(川底が低くなる)により取水に困難を来したことや、首都圏の急激な水需要の増大に対応するため、「利根導水事業」が計画され、その一環として利根大堰が建設された。63年に事業に着手し、68年に完成した。この利根大堰を通じて年間約18億立方メートルの水を利根川から取水し、農業用水(2万3300ヘクタール)、水道用水(給水人口約1200万人)、工業用水として供給し、首都圏の生活や経済を支えている。
◆利根大堰の概要
利根川の長さは322キロメートルで、信濃川に次いで長い。通常流量は290立方メートル/秒(埼玉・栗橋観測所)だが、洪水時は約100倍の流量になる。海外の河川をみると、洪水時と平常時の流量差が1ケタ(英テムズ川は8倍、独ドナウ川4倍、米ミシシッピ川3倍)なので、利根川のケタ違いぶりが分かる。利根川上流で降った雨は山を駆け下り、水路を走り、海に突入する超特急のようである。利根川は昔から坂東太郎(暴れ川)の異名を持つ。
埼玉と群馬の県境にある利根大堰は、利根川河口の上流154キロメートルに位置し、ゲート12門、取水口、樋管、沈砂池で構成されている。取水口から農業用水、都市用水、浄化用水として合計最大約120立方メートル/秒を取水している。取水された水は、行田水路、見沼代用水路、武蔵水路、埼玉用水路、邑楽(おうら)導水路に分水されている。中でも武蔵水路は、利根川(利根大堰)から埼玉県鴻巣市の荒川に注ぐ連絡水路として14.5キロメートルの長さを持ち、埼玉県や東京都の都市用水として最大約29.6立方メートル/秒、隅田川の浄化用水として最大8.2立方メートル/秒を導水している。