タイ前首相国外逃亡の全容判明 排除の論理で大きな転換期 (2/3ページ)

海の向こう側に見えるチャーン島に向かうフェリーの桟橋=7月下旬、タイ南東部トラート県(小堀晋一撮影)
海の向こう側に見えるチャーン島に向かうフェリーの桟橋=7月下旬、タイ南東部トラート県(小堀晋一撮影)【拡大】

  • インラック前首相(左)と兄のタクシン元首相(前首相が今年7月に公開した自身のフェイスブックから)

 チャーン島はタイでプーケット島に次ぐ大きさの島だが、観光客は多くない。島にある繁華街も小規模で、険しい地形から島を周回する道路すらいまだ整備されていない。このため、南部を中心に漁港を兼ねた私設港が点在し、入管を経ないカンボジアとの渡航が事実上可能となっている。

 本土と島とを結ぶフェリーも10近いルートがあり、運航会社ごとに桟橋を保有していて渡航記録は集約されにくい。午前5時台からの早朝便もあって、お忍びで渡るには格好の島とも言える。ほとんどのフェリーで乗用車ごと乗船ができる。

 この島に、前首相側の協力者がいたことが軍と警察の追跡で明らかになっている。トラート県本土からそのまま南進すればカンボジア国境に至るが、周囲を国定公園の未開地が囲むため迂回(うかい)もできず、陸路での脱出は適当でない。軍や警察が、チャーン島を経由して沿岸伝いか海路からのカンボジア入りを強く疑っているのにはこうした理由がある。

 後継者にも不正疑惑

 そもそもタクシン派は前首相の刑事裁判を薄氷で勝訴した後、来る総選挙で巻き返しを図る公算でいた。そのための弁護団でもあった。ところが、軍政下での公判が進む中で形勢は次第に劣勢に傾いていった。こうした中、自派をさらに窮地に陥れる新たなスキャンダルが持ち上がった。

 元・前首相が政界を去った後、タクシン派の次期ホープとして期待されていたのが元首相の長男パーントーンテー氏だった。ところが、元首相時代の03年に国営クルンタイ銀行から拠出された99億バーツ(約340億円)の巨額不正融資事件をめぐり同氏が関与したとして、法務省特別捜査局(DSI)が告訴の方針を固めたとの情報が浮上したのだ。容疑は資金洗浄。有罪となれば政治一家チナワット家は断絶の可能性も出てくる。

元首相の指示でインラック氏も国外脱出