彼らのように一定以上の成功をおさめた人々を見て、世間も成功者を妬むのではなく尊敬し、自分たちもお金儲けをしようという発想になっていくのです。
それに対して、日本ではどうでしょうか。松下幸之助さんは松下政経塾をつくられましたし、近年では稲盛和夫さんが京都賞をつくられました。歴史を遡れば、数百以上の慈善団体をつくられた渋沢栄一さんもいらっしゃいます。素晴らしい方々がおられる一方で、欧米に比べると数は少ない。日本人は、公のためにお金を使うことをもっと覚えたほうがいいと思います。
お金の魔力に屈しないためには
自分で直接、正しいお金の使い方をすることが難しいなら、それができる人に託してもいい。出光興産の創業者、出光佐三さんは、実家が破産した状態から事業を起こそうとしました。そのとき資金を提供してくれたのが、日田重太郎さんという資産家です。
日田さんは、「俺は事業なんぞに興味はないから、返す必要はない。独立自営の主義を徹底して、親に孝行して兄弟仲良くせよ。このことは他人にも言うな」と言い、自分の別荘を売ってつくったお金を手渡しました。出光さんはそれを元手に会社を設立し、人類の平和や繁栄を目指して経営を行った。日田さん自身が直接事業を行わなくても、人を介して社会に貢献したわけです。
このように、世のため人のためにお金を使う方法はいくらでも考えられます。ところが、それを知らない人はお金を貯めこむだけ貯めこみ、私利私欲のための無駄な使い方をしてしまいます。お金にケチな人のことを「吝嗇」と言いますが、中国古典では最も軽蔑される人間のタイプです。また、お金を持った途端に人間が変わり、酒池肉林に耽るのも最悪の使い方です。お金の魔力に屈してしまったんですね。