安室奈美恵の引退に思うこと 我々中年が「平成の歌姫」になかなか共感できない理由 (4/4ページ)

安室奈美恵の紅白出演を報じるスポーツ紙
安室奈美恵の紅白出演を報じるスポーツ紙【拡大】

 私たち中年は、何を信じて生きればいいんだ? いつも、「すみませんすみません」と謝り続け、将来に不安を抱く日々をいつまで送ればいいんだろう? 同じアムラーでも、当初はイヤイヤ戦っていた『機動戦士ガンダム』のアムロみたいなもんだ。いや、実際はアムロにもなれない、ジムに乗る無名の兵士レベルなのだ。リュウのようにコア・ファイターで突撃する勇気すらない。セイラさんに「軟弱者!」と罵倒されそうな人生を送っている。いや、その軟弱者にすらなれないんだ。自分の存在が何なのかさえ分からず震えているのだ。

◆安室の引退表明に「邪魔者が消えた」と思った

 自分の心の奥に秘めた闇を吐露するならば、ぶっちゃけ安室奈美恵が引退表明したとき、「邪魔者が消えた」「勝った」と思ったんだ。新しいことをやって注目されている人が去って、旧来のレールにも乗れず新しいレールも見つからなかった私は、何かこう救われた気がしたんだ。もう安室のことを意識しなくていいんだって。

 でも、だんだんそう思う自分が可愛そうで、かっこ悪くて、辛くなったんだ。安室奈美恵は、「Stop the music」を決断し、降りることができたんだ。私たちはレールのない、列車に乗り続けなくてはならないんだ。どうやったら、この「スペランカー」みたいな、無理ゲー的な人生から降りられるんだろうって真剣に考えるよ。毎日「たけしの挑戦状」を叩きつけられているような日々なんだ。

 はぁ、はぁ。水を飲ませてくれ。水を飲ませてくれ。笑え。笑えよ! 情けないだろ。かっこ悪いだろ。俺みたいに、なりたくないだろ!

赤裸々に心情を吐き出してしまったが、そういうわけで、同世代のようで決してそうではなく、尊敬できそうでできない中年と安室奈美恵という問題を議論していて、何だか辛くなってしまったのだった。

 人生、山あり、谷あり、モハメド・アリ。安室奈美恵の引退後の人生を考える余裕なんてないけれど、私たちは私たちの人生を生きよう。

 「CAN YOU CELEBRATE?」

【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)

常見陽平(つねみ・ようへい)千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【常見陽平のビバ!中年】は働き方評論家の常見陽平さんが「中年男性の働き方」をテーマに執筆した連載コラムです。更新は隔週月曜日。

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