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□産経新聞論説委員・長辻象平
アメリカザリガニがホットな話題になっている。その一つは駆除活動だ。
池や沼をはじめとする淡水の生態系の破壊者としてクローズアップされている。
影響がすごいのだ。アメリカザリガニがため池などに侵入すると池の環境が一変する「レジームシフト」を引き起こす。水草は食べられて消滅し、底の泥土が攪拌(かくばん)されることで澄んだ水も茶色に変わる。
太陽光は水中に届きにくくなり、水草もないので光合成が進まない。結果として溶存酸素の不足が起きて劣悪な環境へと転がり落ちるのだ。
アメリカザリガニの食性は幅広い。子供のころは動物食を好み、大きくなると植物食に傾いていく。彼らが増えた池では、トンボのヤゴやゲンゴロウなどの水生昆虫類が全滅した例もある。
彼らは二枚貝も捕食するので、貝に産卵して繁殖するタナゴ類も痛手を受ける。生態系がこうむる、こうした一連の「アメザリハザード」は深刻だ。
魚類の侵略的外来種では、オオクチバス(通称・ブラックバス)が有名だが、アメリカザリガニは、この魚との関係においても、やっかいな存在なのだ。池や沼でオオクチバスを駆除すると、代わりにアメリカザリガニが大繁殖するという困った事例が相次いでいる。
食物連鎖の上位に君臨するオオクチバスがいなくなる結果、それまで捕食圧がかかって、むやみに増えられなかったアメリカザリガニに、わが世の春が訪れるのだ。