「耐震性の高さのみならず、交通や住宅など周辺環境への工事の影響が小さい」。南海トラフ地震対策として、東日本大震災後に海岸堤防を強化してきた高知県の担当者は、技研製作所の「インプラント工法」(杭を連続して地中深く打ち込む)を、こう評価する。
周辺環境への影響の小ささは、無振動・無騒音の杭(くい)打ち機「サイレントパイラー」による工法の大きな特徴。実際、堤防強化工事の現場で杭打ちを見ていると、横を通る車道の騒音以上の音は聞こえてこない。杭打ちそのものはほぼ無音といってもいいほどだった。
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サイレントパイラーによるインプラント工法の特徴が十分に発揮された事例がある。
神奈川県鎌倉市の海岸沿いを走る国道134号。有名な観光ルートでもあり、1日の車の交通量は2万台を超える。このルートの海沿いの堤防が平成21年の台風の影響で崩壊し、道路に陥没箇所(かしょ)が生じた。
それ以前から、堤防の老朽化に伴う改修工事が検討されていたが、道路通行への影響が大きいことや、南側の砂浜には絶滅危惧種とされている生物(ユキヨモギなど)が生息していることなどから、「既設の堤防の撤去など大規模工事が必要な従来のフーチング工法(コンクリート構造物を地盤に載せる工法)による改修工事では影響が大きすぎる」として、地元住民と合意が得られない状況が続いていた。