患者へどう投与する?
備蓄と同時に、患者への投与にも課題がある。
「病院搬送後に被災者に解毒剤を投与するのでは時間がかかりすぎ、重症者を救命することはできない」と指摘するのは森ノ宮医療大学の吉岡敏治副学長だ。
吉岡氏は「現在は化学剤の検知機器が発達して早期に投与すべき解毒剤が決定できるようになったが、日本ではいまだに医療機関内での解毒剤投与が想定されており、現場投与は想定されていない」と説明。「ホットゾーン(危険区域)からの救出後、除染までの間に解毒剤の投与や救命処置などの特定行為を行えるように、環境整備を早急に進める必要がある」と語っている。
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【用語解説】サリン
神経中毒剤の一種。無色・無臭の液体(常温)で、水によく溶ける。揮発しやすく、肺や目などから吸収され、皮膚に1滴垂らすだけで死に至るとされるほどの猛毒。先の大戦中、ナチス・ドイツで有機リン系殺虫剤の開発中に発見されたもので、発見者の名前から命名された。サリンを使ってオウム真理教が起こした事件の教訓から、平成7年4月、犯罪防止のためにサリン防止法が施行された。