【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(9)「震災前にインプラント工法が普及していたら…」 (1/2ページ)

津波で被害を受けた岩手県釜石市で状況を説明する片田教授。堤防が破壊され住宅地が浸水した=平成23年5月
津波で被害を受けた岩手県釜石市で状況を説明する片田教授。堤防が破壊され住宅地が浸水した=平成23年5月【拡大】

 津波対策は、堤防か、避難か。この問いへの参考になる事例として、東日本大震災の被災地、岩手県釜石市のケースがある。

 釜石では、湾口防波堤(最大水深63メートル)が大きな被害を受けたが、国土交通省などの調査によると、防波堤がなかった場合に想定された津波高約14メートルを8メートルまで低減させ、津波の到達時間を6分間遅らせた。

 一方、学校や地域では地震、津波を学習したり、避難計画を立てるなど避難対策に取り組んでおり、小中学生約3千人のほぼ全員が自主的に避難した。

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 これらの避難対策を指導した東京大大学院特任教授(災害社会工学)の片田敏孝は「住民の避難に、湾口防波堤が果たした役割は小さくなかった」と指摘。防波堤や堤防などハード設備の役割について、片田は「戦後、ハード整備が進み、災害の犠牲者数を年間千人規模から100人規模にまで減少させた」と評価する。

 一方で、近年は、温暖化により風雨水害が激甚・広域化。また、平成7年の阪神大震災、23年の東日本大震災はそれ以前の防災の水準をはるかに超えた。

 つまり、南海トラフや首都直下地震への対策を考えるとき、ハード整備だけでは限界があり、避難計画づくりなどソフト対策を抜きに考えることはできない。

 片田は「近年の災害においては、日本社会の対応力が低下している」と指摘。その背景として「皮肉にも、戦後犠牲者を減少させてきたハード整備がある」と分析する。

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