公金流用で転落した訪問介護の星 信用失墜とオーナーの不正経理に翻弄された結末は… (4/4ページ)

あそかライフサービスの本社
あそかライフサービスの本社【拡大】

◆オーナーらによる破産申請への妨害

 こうした状況の中、オーナーは社長に「廃業は仕方ないが破産は許さない」、「自分も金を出すので、お前も家を売りそのお金を会社に入れなさい」などと繰り返し詰め寄った。また、オーナーの取り巻き役員が破産申請に反対すると、他の役員も「会社を破産にした責任を取りたくない」と言いだし、話し合いを拒絶した。

 杜撰な資金流用にまみれ、破産しか残されていないが取締役会を開催できない。窮地に追い詰められた田中社長がオーナーの呪縛から逃れるため最後に選んだ手段は、取締役会決議なしの準自己破産の申請だった。

 会社は株主のものか、役員、従業員のものか。常に語られる永遠のテーマだ。

 当社はオーナーによる会社の私物化で、否応なしに不正の舞台に足を踏み入れた。会社の実権を掌握する人にすり寄り、保身を図る人はどこの世界にもいる。

 東京商工リサーチの調査では、2017年の上場企業のコンプライアンス(法令順守)違反は64社で過去最多を記録した。企業規模を問わず、コンプライアンスが当然の時代になっている。そして、誤った経営判断や不正は、早急な是正と対応が必要になる。

 資金の私的流用という究極の不正で会社が存亡の危機に立った時、それでも責任逃れで陰に陽に蠢動(しゅんどう)する役員が負う責任は重い。

 《東京商工リサーチ特別レポート》大手信用調査会社の東京商工リサーチが、「いますぐ役立つ最新ビジネス情報」として、注目の業界や企業をテーマに取材し独自の視点に立った分析をまとめた特別レポート。随時掲載します。