【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(24)ケンブリッジ大に「圧入」研究依頼 (2/2ページ)

ケンブリッジ大のワインセラー増設工事はBBC放送が放映し話題に。工事は国際学会創設のきっかけとなった
ケンブリッジ大のワインセラー増設工事はBBC放送が放映し話題に。工事は国際学会創設のきっかけとなった【拡大】

 欧州では、言葉の違いによる意思伝達の難しさがある上、「(杭として使用する)鉄の扱い方の文化が違った」(北村)。日本では、鉄資源が乏しいことから、建設の工事現場で使用する鉄材(杭)は引き抜いて繰り返し再利用できるように、高品質・高強度の資材として発達してきた。サイレントパイラーによる施工でも、そうした杭を使っていた。

 しかし、植民地を抱え伝統的に鉄鉱石資源の豊かな欧州では、「鉄材も消耗品であるがゆえに、材質は良くなく、施工技術もあまり発達しなかった」。こうした施工に対する考え方や文化の違いがあるため、「圧入原理・工法」の合理性を主張しても理解が及ばなかったのだ。

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 言語や文化を超え圧入工法を普及させるため、北村は、経験則や職人的な勘に頼る方法ではなく、科学的根拠を伴った学術的解明の必要性を感じ始めていた。

 ちょうど英国ケンブリッジ大で、サイレントパイラーを使ったワインセラー増設工事が行われ、地元BBC放送が工事の様子を伝えて話題になった。北村は、それをきっかけに、同大学に「圧入の学術的な研究をしてもらえないか」と呼びかけた。

=敬称略

 首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。