
イギリスのケンブリッジ大学で開催された国際圧入学会設立総会=2007年2月【拡大】
技研製作所社長の北村精男(あきお)らが昭和50年に開発した無振動・無騒音の杭(くい)打ち機「サインレントパイラー」は、8年後には欧州で反響を呼んだ。
しかし、北村には「需要の『点』が『面』に広がらない」もどかしさがあった。新工法(圧入工法)を説明しようにも、言語などの壁を超えることができなかったからだ。そこで北村は、圧入原理・工法について、科学的根拠を伴った学術的解明を進めることを着想。その研究を、イギリスのケンブリッジ大学に呼びかけた。
■ ■
この提案に呼応したのが、同大教授(現・名誉教授)のマルコム・ボルトンだった。土質工学が専門で、2007(平成19)年に発足する「国際圧入学会(IPA)」で初代会長を務めることになるボルトンは、北村が研究を呼びかける以前に偶然、サイレントパイラーのビデオをみており、圧入工法に関心をもっていた。
ボルトンは1993(平成5)年、北村の招きで高知を訪れた。そのとき、北村に「創意と、自ら開発した工法の科学的解明への強い意思を感じ」、圧入原理について「地盤工学を考慮する必要性を説明した」と振り返っている。
その後毎年夏、ボルトンは学生とともに高知を訪れ、サイレントパイラーの実証実験による共同研究を技研側と重ねた。今では、学生の中から圧入研究の博士号取得者を輩出。また、硬質地盤への対応力向上や、高速の水流で地中の抵抗力を低減させる工法の開発などと、研究成果を還元していった。
■ ■
こうした研究の積み重ねを踏まえ、北村は平成17年、大きな一歩を踏み出す。高知工科大学長(当時)の岡村甫(はじめ)とボルトンに、国際学会創設への協力を呼びかけたのだ。