無振動・無騒音の杭(くい)打ち機「サイレントパイラー」を開発した技研製作所は平成23年の東日本大震災以降、杭を連続して打ち込み造った「壁」に、堤防・防波堤の機能をもたせる「インプラント工法」を主力とし、「国土防災企業」を標榜(ひょうぼう)している。
現在、高知市などの沿岸部で堤防強化工事を進めているが、技研製作所社長、北村精男(あきお)は「堤防の上でマラソン大会をやればいい」と提案する。「莫大(ばくだい)な税金を使って堤防を整備しても、いつ起きるか分からない災害時にしか役立たないのでは非効率すぎる」からだ。
高知県沿岸は太平洋の雄大な景観に恵まれているのに、日常は巨大な堤防の壁を見て暮らすというのは、いかに安全重視といえども「人の生活を豊かにするとはいえない。せめて、ふだんは風景を背景にランニングを楽しむような環境であるべきだ」とも語る。
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こうした北村の考えの原点ともいえるのが、平成6年に技研製作所の敷地内の地下に建設した社員用の駐車場だった。その構造は、地中に円形状に杭を連続して打ち込み、中の土を取り除いて円筒形の空間として、その中に放射状の駐車場を配置したものだ。