【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(29)企業目標に天井をつくらず (2/2ページ)

整然とした工場内で作業する社員。創業以来死亡事故ゼロを達成している=高知市の技研製作所本社
整然とした工場内で作業する社員。創業以来死亡事故ゼロを達成している=高知市の技研製作所本社【拡大】

 サイレントパイラーの販売を開始したときは、価格の決定をめぐって、「売ってもうけようということは考えてなかった。どうしてもと望まれ、断腸の思いで『嫁に出す』ような気持ちだった。だから、高い価格設定とし、値引きの要請には絶対応じなかった」と語る。

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 こうした経営哲学・方針は社員に浸透し、ときに社員の支えとなった。高知県外では初の営業所を大阪に設けた際、当時所長を務めた吉村元博は「会社の考え方を(取引相手に)理解してもらうことが第一でした。(北村からの)『安易に売るな』など、今日に通じる方針と助言のおかげで、情報の波に流されることもなく邁進(まいしん)できたことを想(おも)い出します」(技研三十年史)と記している。

 「度重なる自然災害を契機として次世代型の強靱(きょうじん)なインフラを構築する責任は大きくなっている。(企業目標に)天井をつくらず、工法革命を進める知恵を生み出し続けていく」

 プライドと経営哲学を胸に秘め、北村は技研製作所の目標を明言した。

=敬称略

 首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。