
広島市安芸区矢野東の土砂崩れ現場=14日午後【拡大】
水田は、もともと水を貯める機能を備えている。豪雨時に普段よりもう少し高い水位まで雨水を貯められると、個々の田んぼの貯水量はわずかでも地域の水田全体では膨大な水量を蓄えられる。
「薄く広く」が、田んぼダムの特徴なのだ。田んぼダムについては、昨年11月14日にも、この「視点」で書いているが、今回の豪雨禍を踏まえて、改めて紹介しておきたい。新潟県村上市を発祥の地とする治水技術なので、東日本では存在が知られ、普及が始まっているのだが、西日本では多くの人にとって初耳の存在だ。
水田をダムに変身させる装置は、A3サイズほどの木製の板1枚だ。中央付近に直径5センチほどの丸い穴が開いた、この板を水田の畦(あぜ)のコンクリート製の排水枡に差し込むだけでよい。
この板が水田から用水路への排水をせき止めるので、水田内の水位は上がるが、丸穴からゆっくりした排水は続く。豪雨が収まれば畦の内側の水位は下がるので稲の負担は軽減される。
下流側の河川の水位上昇は、田んぼダム群の緩和力によって緩やかなものになるので、氾濫防止につながるのだ。
排水枡のタイプによって調整装置に細部の違いはあるが、基本原理は共通だ。
大型ダムの建造には長い年数と数百億円を要するのに対し、こちらは1枚300円の板を、水田の1万カ所に設置しても300万円。上流域の農家の合意が得られるとただちに実施可能になる。「安く早く」も田んぼダムの特徴だ。