
校外学習後に1年生の男児が死亡し、記者会見で頭を下げる愛知県豊田市立梅坪小の籔下隆校長(右)ら=17日午後、豊田市役所【拡大】
大人になったらこうしたことは異常だと思うものの、当時はこれが私の周囲では常識だった。今回の死亡事故を受け、全国の小中学校では炎天下の行事を中止したり、集会をエアコンの効いた音楽室でやったり、午後の授業をやめる流れができた。夏休み期間中のプールの授業を中止する学校も出た。
◆悲惨な事故でようやく動き出す物事
大変残念なことだが、人が死ぬような悲惨な事故が発生することで、物事というものはようやく動き出すのが現実だ。上記の「冬でも半ズボン」ももしも今も見られる現象だとしたら、凍傷のような深刻なけがが起きて、ようやくその学校では長ズボンが解禁になるのではあるまいか。
結局事故でも発生しない限り理不尽かつ無意味なものがなかなか変わらないのがこの世の常である。2015年、電通社員だった女性が過労死(自殺)したが、彼女の死を受けて同社は22時以降の残業が禁止となり、広告業界の他社も同様に慢性的な長時間残業を是正する流れが生まれた。
今回児童が亡くなった事故により、「暑い時は外での活動を控える」という流れができた。9月に入っても猛暑日が続いた場合、運動会の練習を取りやめる例が相次ぐだろう。 そういえば運動会の組体操の「花」といえば10段にも達する巨大ピラミッドだが、事故が相次いだことからやめる流れとなった。
こうしたことを考えると籔下校長の今回の困惑した謝罪には、「よりによって自分が校長の時になんで……。というか、なぜ我が校でこんなことが起きた……」といった感情もあるのでは、と勘繰ってしまう。それは「判断が甘かったことを痛感しています」という言葉に集約されていると思うからだ。