風景の美醜に常に敏感であれ 「まもることにコミットする」大切さ (1/3ページ)

クチネッリ氏のスピーチはソロメオの丘の上で行われた(C)Brunello Cucinelli
クチネッリ氏のスピーチはソロメオの丘の上で行われた(C)Brunello Cucinelli【拡大】

  • 公園のなかには「人間の尊厳にささげる」との文字が刻まれている(C)Brunello Cucinelli

【安西洋之のローカリゼーションマップ】

 「尊厳」という言葉は、どうも難しい漢字の羅列に見えてしまう。よく見る言葉でありながら、親近感をもって普通に使えるとは言い難い。

 「人の尊厳」を重んじるのが人の生き方として大切である。こう強調する人へインタビューした内容をもとに本の原稿を書いていたぼくは、この言葉をもっとやわらかく表現する必要を感じた。

 そこで糸井重里さんに「尊厳」に替わる言葉を相談してみた。そうしたら「ありがたし」が相応しいのではないか、というアドバイスをいただいた。生かされていることへの「ありがたし」だと理解した。

 ただ、ぼくはこの「ありがたし」を自分のアイデアのように書くには気がひけ、この一連のエピソードを含めて本の原稿とした。

 2014年に出版した『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』のなかにおさめた「倫理資本主義を実現するブルネッロ・クチネッリ」の一部である。

 同社は、エルメスと同等のブランド価値と評価される1978年創立のファッションメーカーだ。創業者のクチネッリ氏は1985年に丘の上の崩れかけた中世の街に本社を移し、こつこつと街の再生に励み、劇場・図書館・職人の学校などを作ってきた。そして今度は、その丘の上から眺めた平地の風景に手を付け、それが一段落した。

 今週、そのブルネッロ・クチネッリ氏のプレゼンテーションが、本社のあるウンブリア州ペルージャに近いソロメオであった。本社・公園・ワイナリーなどを案内された後、街の広場の特設会場(言うまでもなく、ここから彼の財団が整備した風景が一望できる)で、世界各国から招いた500人のジャーナリストを前に、彼は語りかけた。

「風景の番人」としての決断