【松本真由美の環境・エネルギーDiary】自治体SDGs 行政主導脱却が鍵 (3/3ページ)

「持続可能な開発目標」実現を目指す推進本部の会合であいさつする安倍首相(左から2人目)=2017年12月26日午前、首相官邸
「持続可能な開発目標」実現を目指す推進本部の会合であいさつする安倍首相(左から2人目)=2017年12月26日午前、首相官邸【拡大】

  • 第1回「ジャパンSDGsアワード」の表彰式で安倍首相(前列中央)と記念撮影に臨む受賞者=2017年12月、首相官邸
  • 北海道ニセコ町のスキー場

 --自治体SDGsの好事例は?

 「北海道ニセコ町を紹介します。人口は5000人ほどですが、1980年以降、ほぼ一貫して人口が増加しており、2017年度の観光客は167万人超に上りました。“住民自治活動と行政の連携”による地域づくりがニセコ町の大きな特徴です。01年には、住民自治のさまざまな取り組みを法令で裏打ちする『まちづくり基本条例』を全国で初めて施行しました」

 「また、スキー場管理区域外を滑走する自由と安全のために作られた地域の公式ルール“ニセコルール”は、行政と地域関係者のパートナーシップの下、地域関係者が主体的に運営を続けているのが特徴です。このルールが、パウダースノーに魅せられた国内外の観光客を呼び寄せ、ニセコを世界的なスキーリゾートに成長させる原動力になりました」

 「『地下水保全条例』と『水道水源保護条例』を道内で先駆けて整備したことでも注目されました。町としてぶれない景観・環境保全の考え方を仕組みにしたことで、乱開発を防ぎ、町の考え方に共感した投資を呼び込む好循環を生み出しています。こうした投資を呼び込む仕組みは、持続可能な地域づくりに大きく貢献します」

農山漁村、都市支え合い

 「今年4月に閣議決定した『第5次環境基本計画』では、『地域循環共生圏』の創造が目指すべき社会の姿としています。農山漁村、都市の各地域がその特性を生かした強みを発揮し、互いに補完し、支え合いながら、地域内にとどまらず、幅広い地域とのパートナーシップを充実・強化していく絵姿は、自治体SDGsの取り組みに通じています」

 SDGsの17ゴールは、環境のほか、貧困、不平等、平和、教育など幅広い。そのため、自治体がSDGsに取り組もうとすると庁内の部署をまたがるため、部署間の調整が難しい場合も多いと、金井氏は指摘します。こうした課題を克服するには、自治体の首長がトップダウンでSDGs推進を明言するとともに、タテワリの行政主導から脱却し、地域の課題に即して横断的な発想で対応することが重要です。

【プロフィル】松本真由美

 まつもと・まゆみ 東京大学教養学部客員准教授(環境エネルギー科学特別部門)。上智大学在学中からテレビ朝日のニュース番組に出演。NHK-BS1ワールドニュースキャスターなどを務める。環境コミュニケーション、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を研究する傍ら、シンポジウムのコーディネーターや講演、執筆活動などを行っている。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)理事。