【高論卓説】既成事実となった憲法改正 「自衛隊明記」 先の議論の道筋不可欠 (2/2ページ)

 理由はどうであれ、いじめ問題を放置していいわけではない。「神学論争」が国会での憲法の議論や、国民の思考まで奪っているという弊害は大きい。

 しかし、これだけでは、国民を守るための最も根拠となる9条改正の理由としては、あまりに「内向き」である。

 日本の憲法も、諸外国と同じように変えることができるという「実績」を作るために、国民の9割が敬意を表す自衛隊を明記する「加憲」という選択を首相以下の自民党がしたことを、国民は既に見抜いている。むしろ、そう言ってくれた方がよほどスッキリする。

 しかし、そのときに国民を守るための憲法として、本当に機能させるためには、この改憲では不十分であるということを、国民に正直に伝える努力をしてもらいたい。

 事実、自衛隊を明記しても、外国の軍隊同様の扱いは、特に有事において自衛隊は認められず、自衛隊も、そして国民も不本意ながら危険を回避できない状況は変わらないのである。

 万一、自衛隊員の尊い命が奪われるようなことになったら、家族は憲法に自衛隊が書いていないということより悲劇的ではないだろうか。

 自衛隊員のみならず、全ての国民と、そして、この先の未来を生きていく子供たちは、結局、国家に守られずにこの脆弱(ぜいじゃく)な日本で生きていく現状からは何も変わらないのである。

 改憲の既成事実化の意義は大きい。しかし、首相の考える9条改正案を通すのなら、せめて、本来の論点を正式な声明として、首相自ら国民に伝え、議論の道筋をつけるべきである。

 そうでなければ、実質的に意味のない改憲で終わる。首相も自民党議員も、本当にそれで良いと思っているのだろうか。

【プロフィル】細川珠生

 ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。1児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。