【寄稿】1.5℃に気温上昇を抑えることは可能か? WWFジャパン・小西雅子 (1/2ページ)

夜を徹した検討作業で特別報告書の「政策決定者向けの要約」が承認され、拍手に包まれた会場(C)WWFジャパン
夜を徹した検討作業で特別報告書の「政策決定者向けの要約」が承認され、拍手に包まれた会場(C)WWFジャパン【拡大】

 ■特別報告書が醸成する新たなスタンダード

 □WWFジャパン自然保護室次長/気候変動・エネルギープロジェクトリーダー小西雅子

「1.5℃特別報告書」の背景

 今年の日本の夏は、地球温暖化によってかさ上げされたとみられる猛暑や洪水など極端な気象現象に見舞われました。現在の度合いで温暖化が進行したら、21世紀末には世界の平均気温は4℃程度上昇するとみられており、そうなった場合の影響は計り知れません。

 そのような事態を回避すべく、世界の平均気温の上昇を2℃未満より十分低く抑えることを長期目標としたパリ協定が、2015年末に成立しました。世界はいま、2020年のパリ協定スタートに向けて、協定の詳細なルールづくりなどに邁進しています。

 しかし、気温上昇を2℃未満に抑えることができたとしても、小さな島国やアフリカ諸国、後発開発途上国では、海面上昇による国土の消失など取り返しのつかない影響にさらされる可能性が高いのです。そこで、これらの島国連合やアフリカ諸国連合に配慮して、パリ協定の長期目標には、2℃を目指すとともに、1.5℃に抑える努力をすることが盛り込まれました。

 これを受けて、パリ協定が採択されたCOP21の決定により、気温が1.5℃上昇した場合の影響と、1.5℃に抑えるための排出経路や方策について科学的知見を集めた特別報告書を提供するようIPCC(気候変動に関する政府間パネル)に要請が出されました。これまでのIPCCの報告書には、気温が1.5℃上昇した場合の影響や排出経路を示した科学的知見がほとんどなかったためです。

1.5℃の影響は?

 COP21から約3年を経て、韓国・仁川で開催されたIPCCの第48回総会で、1.5度特別報告書(以下、特別報告書)が承認され、10月8日に公表されました。

 それによると、産業革命前からの気温上昇は、人間活動によってすでに約1℃上昇しており、現状のまま温室効果ガス排出量が増加していけば、2030~52年の間に1.5℃に達するだろうとの見通しが示されました。

 そして、1.5℃と2℃とでは、温暖化が及ぼす影響にかなりの違い(robust difference)があることが指摘されました。たとえば、熱波にさらされる世界人口は、1.5℃に比べて2℃の場合は17億人も増加することや、洪水リスクにさらされる世界人口は、1.5℃の場合が現状の2倍になるのに対し、2℃の場合は2.7倍になると予測しています。

 ちなみに、4℃上昇した場合の洪水リスクは現状の5.8倍になると同じ研究の中で言及されています。つまり、気温上昇を2℃に抑えた場合、現状で世界が向かっている4℃上昇の世界よりははるかにマシであることは確かですが、1.5℃に抑えることができれば、もっと影響を抑えられることが示されたわけです。

 今回の特別報告書で明示されたことは、干ばつや台風に関連する豪雨、海面上昇、生物種への影響、熱中症やマラリア・デング熱など人の健康にかかわる影響まで広範囲にわたって、1.5℃のほうが2℃と比べてリスクを低減できるということです。0.5℃の差は大きいことが指摘されたわけです。

1.5℃に抑えるためには?