「うっかり」では済まされない…年2000億、“無断キャンセル被害”の深刻度 (3/4ページ)

 一方で、SNSで無断キャンセルを知ったお客が来店して損失をカバーできるなど、ネットをうまく活用して飲食店側の被害軽減を実現するケースも増えている印象だ。2018年3月には、無断キャンセルが裁判になり飲食店が勝訴したことも話題になった。

 だからと言って、無断キャンセルが増えているのかと言えば、決してそうではない。筆者は2000年から十数年間にわたり飲食店の経営に携わっていたが、一定の割合で無断キャンセルは起きていた。当時はその悔しい気持ちを広く発信する機会がなかった。SNSの普及によって情報発信が簡単になったことで、無断キャンセル問題が可視化されたのだろう。

無断キャンセルには3つのタイプが存在する

無断キャンセルには3つのタイプが存在する

 消費者の意識と3つの無断キャンセル

 そもそも、無断キャンセルはどうして起こるのだろうか。原因は大きく3つに分けられる。まずは「うっかり」だ。予約そのものを忘れてしまったり、日時を勘違いしてしまったりする、というケースだ。お客が飲食店へのキャンセル連絡を忘れてしまうこともここに含まれる。会社勤務の人が電話をしやすい昼休みや終業後の時間帯は飲食店にとっては忙しいため、電話が繋がらず、キャンセルを伝えられなかった、ということもあるだろう。最近は、同じ日時に複数の店を予約し、直前にひとつを選ぶというお客も増えているという。そこで、選ばなかった店へのキャンセル連絡を忘れてしまうのだ。

 ふたつ目は消費者の「認識不足」だ。無断キャンセルが飲食店の収益を大きく圧迫する事情を理解していないお客は、残念ながらまだまだ多い。だから、仮に予約した飲食店に行けなくなったとき、「きちんとキャンセル連絡を入れる」ことが一般常識になっているとは言いがたいのが現状だ。たとえ無断キャンセルしてもすぐに別のお客で席が埋まると考える消費者も少なくない。無断キャンセルの深刻さを理解する消費者が増えるだけで、無断キャンセルは確実に減らせるものと考える。

 最後は「悪意」だ。飲食店に対して不満を持つお客の腹いせや、ライバル店を蹴落とすための嫌がらせで架空の予約を入れ、わざと無断キャンセルをしたりするというケースも、残念なことにゼロではない。

 ITの力を使って無断キャンセルの抑止を

 ただし、無断キャンセルの多くは「うっかり」や「認識不足」だ。だから、消費者に対して無断キャンセル問題への理解を深め、マナーの向上を呼びかけ意識を変えることには一定の効果は期待できる。

 しかしそれだけでは根本的な解決にはならない。無断キャンセルの背景には、「お客が飲食店にキャンセルの連絡をしたのに電話が繋がらなかった」とか「予約日時の聞き間違い(言い間違い)があった」といった事情があるからだ。ITの力を活用すれば、解決できるケースも少なくない。

なくなれば消費者に利益が還元される