シカの害、無いはずが…奈良で「ゆずの里」目指す過疎の村、その苦闘 (1/3ページ)

東吉野村で栽培されたユズの実(同村提供)
東吉野村で栽培されたユズの実(同村提供)【拡大】

  • 北さんが畑に設置したシカよけの防護柵。材料費の3分の2は村からの補助だ=奈良県東吉野村
  • シカに食べられたユズの葉。枝に鋭いトゲがあっても気にせず食べてしまう=奈良県東吉野村
  • シカに食べられたユズの木を示す農家の北久雄さん。高さ1メートルの辺りまでは軒並み被害を受けたという=奈良県東吉野村(写真をクリックすると他の写真も見られます)
  • 東吉野村のユズ商品。奈良県内の道の駅などで購入できる=奈良県東吉野村
  • 加工場では手作業でユズの商品作りが行われている=奈良県東吉野村

 若者の流出に歯止めがかからず、人口減少率が全国でワースト5位にランクされる奈良県東吉野村。典型的な過疎の村が7年前、起死回生の一手として打ち出したのがユズの栽培だ。寒さに強いユズは育てやすく、シカの食害を受けにくい農作物として知られる。ところが、ふたを開けてみると、シカに葉を食べられるケースが相次ぎ、収穫量は当初の見込みを大幅に下回った。人口約1600人の村の約100世帯が参加したプロジェクト。「ゆずの里」へのシナリオには狂いが生じたが、村民はめげていない。(桑島浩任)

 かつては林業で栄え…

 東吉野村は三重県と県境を接する奈良県中東部に位置する。高齢化率は50%以上。昭和35年ごろに1万人の大台に迫った人口は減少の一途をたどり、30年後には400人規模に減ると見込まれている。国立社会保障・人口問題研究所が昨年3月に発表した推計によると、人口減少率は74.8%と極めて高く、2045年には14歳以下の人口がわずか「10人」になるという予想がはじき出された。

 「林業が下火になるにつれて、村の活気も消えていった」。村民はこう口をそろえる。

 最高級の建築材として知られる吉野杉の産地として栄え、最盛期の昭和50年代には林業だけで年間20億円を超える売り上げがあった。だが、安い洋材の出現で村の林業は衰退。最盛期に約500人いた林業従事者は今、50人にも満たない。

 村は標高400~500メートルにあり、寒暖差が激しく平地が少ないため農業には不向き。他の産業が発達する余地もなく、若者が職を求めて村外へ出ていくという状況が長年続いている。

肝いりの計画も…問題の背景には