シカの害、無いはずが…奈良で「ゆずの里」目指す過疎の村、その苦闘 (3/3ページ)

東吉野村で栽培されたユズの実(同村提供)
東吉野村で栽培されたユズの実(同村提供)【拡大】

  • 北さんが畑に設置したシカよけの防護柵。材料費の3分の2は村からの補助だ=奈良県東吉野村
  • シカに食べられたユズの葉。枝に鋭いトゲがあっても気にせず食べてしまう=奈良県東吉野村
  • シカに食べられたユズの木を示す農家の北久雄さん。高さ1メートルの辺りまでは軒並み被害を受けたという=奈良県東吉野村(写真をクリックすると他の写真も見られます)
  • 東吉野村のユズ商品。奈良県内の道の駅などで購入できる=奈良県東吉野村
  • 加工場では手作業でユズの商品作りが行われている=奈良県東吉野村

 シカは本来、かんきつ系の強い香りを好まない。だが、エサにありつけなくなると、嫌いなものでも我慢して食べるという。「シカは空腹の状態だと枯れ葉や毒草すら食べてしまう。反芻(はんすう)(一度飲み込んだ食物を口中に戻し、再びかんで飲み込む)動物で、植物であればほぼ何でも食べるシカだからこそ起きる問題」と話す。

 いまさらやめられない

 村はさっそく対策に乗り出し、農作物用の防護柵の補助を拡大。これまで原材料費の半額までだった補助金額を3分の2まで引き上げた。これを活用し、北さんが畑の周囲に高さ約1.5~2メートルの柵を設置したところ、食害はぴたりとやんだという。効果はてきめんのようだ。

 もっとも、くいを打ち込み、トタンやネットを張る防護柵の設置は高齢者には大変な重労働だ。野生化したアライグマなどがネットを食い破ることもあり、定期的な補修も欠かせない。それでも北さんは「村を活気づけるために始めたこと。ちょっとの苦労でやめるわけにはいかない」と力を込める。

 水本村長は「高齢者たちが元気になることが、村が活気づく近道」と語る。ユズ栽培を通じ、人口の50%以上を占める高齢者に意欲や活力を取り戻してもらうことも目的の一つだ。

 村長自身も自宅の庭に2本のユズを植えている。「休耕地にもユズを植え、観光客に『ゆずの里』だと一目で分かるようにしていきたい」。かつての活気を取り戻すべく、村民たちの挑戦は続く。