【経済インサイド】豚コレラでのワクチン接種、慎重にならざるをえない理由 (3/3ページ)

相次いで豚コレラが発生した愛知県田原市の養豚場周辺から作業に向かう防護服の陸上自衛隊員ら=2月15日午後
相次いで豚コレラが発生した愛知県田原市の養豚場周辺から作業に向かう防護服の陸上自衛隊員ら=2月15日午後【拡大】

 こうしたこともあり、農水省は、ワクチン接種に関しては現在、「時期尚早」との立場を崩していない。ひとまず、発生源ともされる野生イノシシへの餌ワクチンの散布を3月中旬から実施する。餌ワクチンはドイツから輸入して、春、夏、秋にそれぞれ8万個ずつを散布して様子をみる方針だ。

 ただ、これ以上、豚コレラの封じ込めに手こずれば、ワクチンの使用に踏み切る決断も必要になりそうだ。農水省は難しい判断を迫られている。

(飯田耕司)

 ■豚コレラ 豚やイノシシ特有の家畜伝染病。発熱や食欲減退などの症状が現れる。感染力が強く、豚の糞尿(ふんにょう)や血が付いた衣服や長靴などを介しても拡散する。人にはうつらず、感染した豚の肉を食べても影響はない。感染豚の肉が市場に出回ることもない。国内では熊本県で平成4年に発生して以降、昨年9月に岐阜市内の養豚場で判明するまで確認されていなかった。