「糖尿病」指導をカード方式で 患者ごとにきめ細かく、情報共有も容易に
平成24年時点の推計患者が“予備軍”を含め2千万人を超す糖尿病は、代表的な生活習慣病だ。治療効果を生み、合併症を防ぐには本人の理解と生活改善が欠かせないが、病状の進行や生活環境によって学ぶべきことが異なり、きめ細かな指導は難しい。日本糖尿病協会は、効率的に患者を指導するためのカードシステムを製作し、講習会で普及に取り組み始めた。
茨城の医師が開発
糖尿病患者の生活改善指導をするのに、専門の医師だけでは到底足りない。日本糖尿病学会などは13年から「日本糖尿病療養指導士」の資格試験を実施。これまでに看護師や管理栄養士など約1万9千人が合格したが、指導士の不足や地域の偏りは解消されていない。
協会が普及を目指すカードシステムは茨城県那珂市の「那珂記念クリニック」院長、遅野井健さんと療養指導士でもある看護師、道口佐多子さんが原型を開発。12年から実際に使っている。
遅野井さんが開発に取り組んだ1990年代の指導は、患者を集めた「糖尿病教室」が主で、使えるツールも手作りのパンフレット程度。患者の理解や生活改善になかなか結びつかなかった。最初は、パソコンに要点を表示して患者を指導する方式で開始。その後、ひと目で分かりやすく、情報の共有もしやすいカードシステムに変えた。
メッセージ伝える
カードは名刺サイズで79枚。1枚ごとに表に「血糖について」など大項目が、裏には「エネルギー源としての糖」「ブドウ糖利用の必要性」など小項目が書かれている。
ABCの3段階があり、まず糖の働きや血糖値の意味など基礎を学ぶAのカードから始め、病状が進むと出てくる網膜症や神経障害などの合併症や服薬などの“予習”に当たるBへ進む。さらに詳しく知りたい患者には専門的なCのカードも用いる。
個々の患者ごとに必要なカードを1冊のフォルダーに入れ、現状で優先的に知るべきこと、既に学んだことに分けて整理し、指導を進める仕組み。指導計画の中で、患者が今どんな状況で、それをどの程度理解しているのかがすぐ分かるのが最大の利点だ。
患者にやる気を持ってもらうための指導リーフレットも使用する。各カードで学ぶ内容を図解付きで要約した印刷物で、内容は一見して大づかみで具体性に乏しい。遅野井さんは「指導する人が患者の検査データやそれに基づく目標を自筆で書き込んで渡す。それが『これだけは覚えてほしい、守ってほしい』という強いメッセージとして患者に伝わる」と言う。
年内に1000人目標
日本糖尿病協会の堀田裕子事務局長によると、協会の清野裕理事長が平成26年に遅野井院長の実践を聞き、協会の事業として進めることを決めた。
今年3月に福岡市で開いた講習会には60人が参加。グループに分かれ、あらかじめ決められた患者のシナリオに沿ってカードを選び、指導計画を議論した。
議論の途中、道口さんら講師が、患者の検査数値が悪化したり、新しい薬が必要になったりする新しい設定を告げる。参加者は慌ててカードを選び直し、指導計画も組み直す。医療現場で患者の病状が変わるのを模擬した訓練法だ。遅野井さんらがこのシステムを患者指導だけでなく、新任医師や看護師のトレーニングにも利用してきた。
協会は28年度、全国14カ所で講習会を開催し、医師や療養指導士ら約千人にシステムを学んでもらう計画。カードをウェブサイトから利用できるシステムの導入も検討している。
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