GENBI SHINKANSE 現美新幹線(2)蜷川実花の世界に調和した美しい“15号車”は必見!
江藤詩文の世界鉄道旅・夏休み特別企画なぜ新幹線に美術館を合体させるという、世界でも類を見ないある意味奇抜な発想が生まれたのかといえば、新潟エリアではもともと3年に1度世界最大規模のアートイベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が開催されていて、新潟各地とアートが親和する下地ができあがっていたそうだ。そこから新潟が誇る美しい風景を車窓から眺めつつ、さらに現代アートを鑑賞するという新しいコンテンツ「移動型モダンアートミュージアム」が企画された。この“移動する車窓を眺めながら”というところが“現美”の特徴で、つまりじっくり美術鑑賞をするだけなら窓をすべてふさいでしまえばよいのだが、あえて窓を開けておくことで差し込む光がくるくる変わり、それがアートにいろいろな表情を与えている。
15号車に入った瞬間、ぱあっと明るい空間に惹き込まれた。“現美”は観光列車なので休日に新潟旅行と組み合わせて乗車する人も多いはずだ。そんなレジャーを楽しむ気分をさらに盛り上げる華やかな演出。振動する車内という環境を逆手に取り、立体的な花びらは固定せず、車体のリズムに合わせてゆらゆら揺れている。前回お伝えしたように(前回の記事へのリンクをお願いできますか?)、車体のラッピングは写真家で映画監督の蜷川実花さんの作品だが、その世界観ともマッチしているような。これは絶対に感性豊かな若い女性の作品に違いないと思ったら、この作品を手がけたのは1983年生まれの荒神明香(こうじん・はるか)さん。日本のほか台湾やブラジルでも展覧会を開催していて、現代芸術活動チーム「目」のメンバーとしても活躍しているそうだ。
そしてもうひとつ、乗る前から期待していたのが写真家・石川直樹さんの作品が展示された14号車だ。石川直樹さんといえば、北極から南極まで踏破したり、世界七大陸の最高峰に登頂するなど世界的な探検家としても知られている。エベレストの山頂まで行った人が、それに比べればずっと身近で行きやすい新潟で何を見つけ、どう切り取ったのだろう。新潟の車窓と向かい合って並んだ作品は、まぶしい光を受けてきらきら輝いていた。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら
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