GENBI SHINKANSEN/現美新幹線(3)布に鏡、アニメまで。アーティストの個性が光る各車両

江藤詩文の世界鉄道旅・夏休み特別企画
12号車は小牟田悠介さんによる“鏡の国”

 世界最速の芸術鑑賞空間「GENBI SHINKANSEN/現美新幹線」、通称“現美”は6両編成で、これまで11号車が指定席、12~16号車が「びゅう」の旅行商品として発売されていた。しかしこの7月から12~16号車は自由席として発売が開始された。

 普通指定席の11号車に使われているのは、「こまち」のグリーン車だった車両。この車両は、落ち着いて移動したい乗客に向けた座席とアートを同時に提供している。「五穀豊穣」「祝祭」「光」をコンセプトイメージとして織り込んだファブリックアートを手がけたのは松本尚さん。布や紙といった温かみのある素材を用いたインスタレーションが高く評価されているアーティストで、11号車では、光の移り変わりがもたらす布の表情の変化を鑑賞できる。

 12号車は、鏡のマジックで構成された空間だ。片側が窓、片側が鏡面ステンレスになっていて、青空や緑したたる山々、黄金色に輝く稲穂、一面の銀世界といった四季折々の新潟の風景が、鏡の世界に映し出される。進行方向の越後湯沢方面に向かって車両中央に立ち、車窓を飛び去る景色とそれを反転した鏡をいちどきに見ていると、まるで鏡の迷路に迷い込んでしまったかのようで、ちょっと心もとなくなった。アーティストは小牟田悠介さん。

 運行中はどの車両にも自由に移動ができ、ほぼすべての乗客が各車両を周回しながらアートを鑑賞しているが、16号車では少々時間が必要だ。ここでは新潟の風景やカルチャーからイメージを想起した15分ほどのアニメーションが流れている。世界的な映像作家で現在はニューヨークに在住しているアメリカ人アーティスト、ブライアン・アルフレッドさんの作品だ。叙情的な作品には台詞は一切ないが、見ている人が自分だけのナレーションを脳裏に浮かべているのだろう。

 これらに前回紹介した写真家・石川直樹さんによる14号車、荒神明香(こうじん・はるか)さんによる立体アートが美しい15号車が連結されている。

 しかし、さすが世界で唯一無二の新幹線“現美”。見どころはこれで終わりではなかった。

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら