GENBI SHINKANSEN/現美新幹線(4)花より団子!? 食べ鉄・呑み鉄も納得の“誘惑の”13号車

江藤詩文の世界鉄道旅・夏休み特別企画
ミラーに映る車窓を眺めながら12号車でカフェタイム

 この連載で何度も言っているように、列車に乗って食べたり飲んだりするのが何よりも好きだ。11号車から16号車へと順にアートを鑑賞していたが、実はずっと13号車が気になっていた。しかしここで歩みを止めては、その先にある石川直樹さんの14号車、荒神明香さんの15号車、ブライアン・アルフレッドさんの16号車を見ないうちに越後湯沢駅に到着してしまいかねない。そのためあえて13号車には立ち止まらず、そそくさと急ぎ足で立ち去っていた。

 さて、いよいよお待ちかねの13号車へ。16号車から足取りも軽く楽しげに引き返しながら、15号車で一瞬だけ立ち止まる。荒神明香さんによる美しい色で彩られた立体的な花々が可憐に揺れている。まさにいまの私は花より団子なのか。13号車は、画家の古武家賢太郎さんによるロマンティックな絵画が飾られたカフェと、アートユニット「Paramodel(パラモデル)」による触って楽しめる鉄道模型アートが展示されているのだ。カフェで提供されるのは、季節のフルーツの風味がみずみずしいジャムや焼き菓子で有名なお菓子研究家・いがらしろみさんによる地元の素材を生かしたスイーツや、燕三条で人気のコーヒー店「ツバメコーヒー」が監修したコーヒー、さらに新潟のワイナリー「カーブドッチ」のシャルドネ(白ワイン)やメルロー(赤ワイン)、黒ビールとアルコールまで揃っていて、朝イチから販売しているのだ。

 無表情にも雄弁にも見える古武家賢太郎さんが描いた人物や動物たちが、ここは芸術を鑑賞する場だと無言で訴えてくるが、片目はすっかりショーケースに釘付けだ。ここは日本一の米どころ。「魚沼産米粉のバニラケーキ」とさんざん迷って、大ヒットしているという「佐渡クリームチーズのレモンケーキ」とツバメコーヒーを購入した。車内を移動しながら味わえるように、あらかじめテイクアウトのスタイルにセッティングしてある心遣いが日本的でうれしい。

 後ろ髪を引かれつつ「カーブドッチ」には背を向けた。その理由は次回お話したいと思う。

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら