受付嬢をうならせた「一流の雰囲気を漂わせる男」 誰もが持っている“あのアイテム”の使い方に思わずため息…

 
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【元受付嬢CEOの視線】

 前回の連載では「三流社員の特徴」についてお話いたしました。ですが、日に数百人のお客様と接する私たち受付嬢の仕事は、同じ会社で働く社員以上に、取引先のお客様と触れ合っている時間の方が長いもの。実際に受付で目立つのは「三流社員」より「一流のお客様」なのです。

 本来は私たち受付嬢がおもてなしを提供している立場ですが、ときにお客様におもてなしをされているかのような気持ちになったり、プロ意識を持って接客しているつもりが「まだまだ修行が足りない…」と気づかせてくださるようなお客様がいらっしゃったりします。

 今回は受付嬢しかなかなか見ることができない「一流のお客様」についてお話します。

◆受付嬢をうならせた営業マンの気遣い

 【一流のお客様の特徴1】ハンカチを持つ男

 「ハンカチを持つなんて当たり前じゃん!」とツッコんだ人、いますよね(笑)。そのハンカチ、手や汗を拭くために使っているだけではありませんか?

 私が度肝を抜かれたお客様は、ハンカチをそんな風に使うわけではありません。カバンの下に敷くために持っていらっしゃったのです。初めてその光景を見たとき、衝撃が走りました。

 そのオフィスは和室のようなつくりになっていて、靴を脱いで入室する会議室がありました。そこにお茶を出しに入った際に目にした光景でした。

最 初は理解するのに時間を要しました。「もしかしたら畳が汚れていたのかな?」とか「カバンが壊れちゃったのかな?」などと想像しましたが、答えはそのどちらでもありませんでした。

 そのお客様が再訪された際に思い切って聞いてみたのです。「どうしておカバンの下にハンカチを敷いてらっしゃるんですか?」と。

 そうするとお客様は「カバンは靴と同じくらい汚れていると思うんです。僕らは電車で移動しますし、いろんなところにカバンを置きます。靴は脱ぐのに、カバンは気にしないっていうのは失礼に当たると思いまして……。もちろん通常の会議室ではハンカチは敷きませんよ」と丁寧に教えてくださいました。

 さらには「仕事のシーンだけでなく、例えばお客様のご自宅などに招かれる場合や、お仕事の商談がご自宅などの場合も同じようにハンカチを敷きますよ」と。なんとそのあとに「そういうアポが想定される日は靴下も新品を履いて行きます」とこそっと教えてくださいました。

 このときは目からウロコすぎて、思わずため息が出ました。接客が仕事である受付嬢をもうならせる、営業マンのかがみのような方ですよね。私はさらに質問しました。「ご自身で考えてそうするようになったんですか?」

お客様はこう言いました。

 「いえ、新卒で入社したときの先輩の教えです。その先輩から『例えば自分の家に、どこに置いたかわからないカバンをベッドの上に置かれたら嫌だろ?』と言われてハッとしたんです」

 取引先のオフィスに対してそこまで配慮し、相手の気持ちの先を読む心遣いは脱帽以外の何ものでもありませんでした。

 曰く、その先輩から学ぶことは多く、今でも習慣化しているとのことでした。どういった先輩に出会えるのか、誰と一緒に仕事をするのか。ビジネスでの出会いは時にその人の後の人生を左右するのだと感じました。

◆ボールペンをプレゼントされたお客様のその後

 【一流のお客様の特徴2】ボールペンは二刀流

 社会人として、ボールペンを持って行動することは当たり前のことです。しかし、お客様の中には2本常備していらっしゃる方がいました。「1本は高級ブランド、もう1本は100円ボールペン」でした。

 以前の連載で、私が受付をしていた企業の社員からお客様にボールペンをプレゼントしたいという相談があり、ちょっとだけお手伝いをしたという話をしましたが、そのお話には続きがあったのです。

 後日、プレゼントのボールペンを受け取られたお客様が、別の担当者あてに来社されました。

 その際、お客様は胸ポケットに贈られたボールペンを忍ばせ、受付では100円ボールペンを使用していました。

よくいらっしゃるお客様でしたので、受付の際に「ボールペン、2本お持ちなんですね」と声をかけました。

 そうするとお客様は「そうなんです。いただいたボールペンは常に持ち歩いています。使い分けてるんです」と答えられました。

 「どう使い分けてるんですか?」と聞き返したところ、「いただいたボールペンは高級なものなので、契約書にサインをいただくときや重要な意思判断をしていただいたときにお相手に差し出し、このペンでサインをしてもらっています。しかし、場合によっては高級感が嫌味な印象を与えることもあります。それにボールペンをそのまま差し上げた方がいい場合、いただいたボールペンはさすがにお渡しできないですから、そういったことを想定し、常に2本持ち歩いてます」とのことでした。

 私たち受付嬢にとってその方はもちろん「お客様」でしたが、逆にその方にとって私たち受付嬢が働く会社こそ「お客様」です。ビジネスアイテムを介して相手を敬い気遣う気持ちは、非常に勉強になりました。

 今回はみなさんが普段から使っている「アイテム」を一流のお客様が一風変わった使い方をしているお話をさせていただきました。何か特別なものが必要な訳ではないんですね。ぜひみなさんも日常触れているアイテムを使って、自分らしいおもてなしのスタイルを考えてみてはいかがでしょうか。

【プロフィル】橋本真里子(はしもと・まりこ)

ディライテッド株式会社 代表取締役CEO
1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。

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