恵子さんがしたためた「おれいのことば」。昨年11月から12月にかけて執筆。連絡先の名簿を作成、会場やしつらえなども準備していた【拡大】
患者増や変化する治療状況どう対応
越川病院(35床)は緩和ケア病棟ではないが、越川貴史院長は病棟を「帰るホスピス」にしたいと考えている。入院患者の8割超が再発がん。在宅医療も行うため、医療用麻薬を使いながら退院する患者も多い。「状態が悪いときは緊急入院してもらい、痛みのコントロールが済んだら、再び家に帰れるようにできたらベスト」と言う。
海外では「帰るホスピス」はごく一般的。日本でもこうした利用が増える背景には、従来の「看取る」ホスピスが利用しづらくなっていることがある。「都心では半年も入院を待つ例もあり、元気なうちからホスピスを探さなければならない」(越川院長)のが現状。柔軟に入退院ができれば、より多くの人が、必要なときにホスピスケアを受けられるようになる。
だが、在宅看護が困難なケースもあり、退院は容易でない。越川院長は「広い病棟で最高の人員体制で精神的な対応もする。今までのホスピスには良い面もあるが、医療費の観点からも長期の入院は難しくなっている。ジレンマもある」という。
国の政策でも長期入院は減らす方向。緩和ケア病棟には入院日数の規定はなかったが、昨年度の診療報酬改定で厚生労働省は61日以上の入院基本料を引き下げる一方、60日以内の入院基本料を大幅に引き上げた。
患者像の変化もある。従来のホスピスは一般に、治療を終えた人が対象。だが、「分子標的薬などの登場で、ぎりぎりまで抗がん剤治療をする患者さんが出てきた。多様化するニーズに合わなくなっている」(越川院長)。国の「がん対策推進基本計画」では「診断されたときからの緩和ケア」も盛り込まれた。誰もが痛みなく治療を受け、穏やかに逝くにはどうすればいいのか-。
現場では模索が続いている。