【書評倶楽部】京セラ顧問・伊藤謙介 『流星(りゅうせい)ひとつ』 (1/2ページ)

2013.12.30 08:10

 藤圭子の「魂」凝縮

 〈バカだな バカだな だまされちゃって 夜が冷たい 新宿の女〉----哀愁を秘めた美しい面差し、長い髪、挑むようでいて、その底に深い悲しみをたたえた黒い瞳を思い出す。

 藤圭子は、1960年代の末から70年代にかけて、「新宿の女」など、数々のヒット曲を世に送り出した。

 混沌(こんとん)とした時代だった。時代の霧の中から立ち現れた歌姫だった。そんな人気絶頂の歌手が、28歳の若さで引退を決意する。

 本書は、そのとき沢木耕太郎氏が、ホテルのバーでインタビューした記録を再編したものである。全ての文章が、2人の会話で成り立っている。

 長い間、作者の考えで発表を見合わせていた。しかし、改めて読み返し、その死は、〈「精神を病み、永年奇矯(ききょう)な行動を繰り返したあげく」の投身自殺〉ということでは片付けることができないと思った。そこには〈輝くような精神の持ち主が存在〉し、〈透明な烈(はげ)しさが清潔に匂っていた〉。そのことを多くの人に知ってもらうべく世に問うた。

藤圭子は、北海道の旅芸人の一家に生まれた

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