藤圭子は、北海道の旅芸人の一家に生まれた。父は浪曲師、母も眼(め)の不自由な芸人だった。貧困にあえぐ生活から抜けだそうと東京に出る。そして辛酸をなめながら、歌の世界の頂点に立つ。
しかし、そこから見た世界は虚妄と虚栄に満ちていた。彼女は強烈な精神の渇きを覚え、引退を決意する。それは真に生きることを求めて、旅に出る決意でもあった。その軌跡には、真摯(しんし)な一人の人間の生きざまが凝縮している。
「魂」の記録は、沢木耕太郎氏の次の文章で閉じられる。
〈自死することで本当に星が流れるようにこの世を去ってしまったいま、『流星ひとつ』というタイトルは、私が藤圭子の幻の墓に手向(たむ)けることのできる、たった一輪の花なのかもしれないとも思う〉
美しい。(沢木耕太郎著/新潮社・1575円)
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【プロフィル】伊藤謙介
いとう・けんすけ 昭和12年、岡山県生まれ。京セラの創業に参加。経営哲学の継承に力を注ぐ。著書に『挫けない力』など。