新年あけましておめでとうございます。みなさまは今年、どんな鉄道旅行を計画しているでしょうか。このコラムは、年明けの華やいだ気分を盛り上げる絢爛豪華なクルーズトレインで幕開けします。どうぞ引き続きご愛読ください。
「マハラジャだ、マハラジャが来るぞ」。
マハラジャ・エクスプレスの到着に合わせ、プラットフォームの端っこから大急ぎで出発させられる各駅停車で、ざわめきと歓声が上がった。非日常的に飾りつけられたホームをひと目見ようと、車両から身を乗り出す人もいる。ちなみに、この列車には扉がない。のぞいて見るとインド人男性ばかり、ほぼ満席だ。
「これからマハラジャ・エクスプレスというすばらしい鉄道が来る。そちらの写真を撮りなさい」。人のよさそうな恰幅のいい中年男性が、嬉しげに言った。何となく、これからその列車に乗ると言いそびれてしまう。
インドは、世界第4位ともいわれる鉄道大国。庶民が自慢する「マハラジャ・エクスプレス」は、世界最高峰の豪奢な列車を目指して自国で造り上げた寝台車だ。
この日の乗客は、わたしを含めてわずか10名。オーストラリアのアデレードから来た92歳の車いすの未亡人。同じくオーストラリアはシドニーの68歳の大学教授ともうすぐ50歳になる若い後妻。フランスのパリとカンヌに住居を持つ65歳の夫と、皮肉屋でおしゃれなひとつ年上の妻。フランス・トゥールーズで航空機関連製造業の2代目を務めていたものの、ビジネスの世界に嫌気がして世界を旅している72歳の夫と、元は出入り業者だったという、ものすごい玉の輿にのった66歳の妻。ブラジルのリオデジャネイロからは、東京女子医大に勤務していたこともある66歳の外科医の夫と7歳年上の美容外科医の妻。データをつらつらと書き連ねるだけでも、ひと筋縄でもいかなそうなユニークな顔ぶれだ。
マハラジャ・エクスプレスが出発する日だけ造られるという急ごしらえのエントランスをくぐり、花と音楽で歓迎を受ける。10名の乗客に対して、ひと目で把握できないほどうじゃうじゃいる乗務員。これから7泊8日の旅が始まる。
■取材協力:インド政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。