マハラジャ・エクスプレスには、5つのコースが設定されている。
デリーを出発して、タージマハルのあるアグラやジャイプールを周回し、デリーに戻ってくる3泊4日の「インドの宝石」と「インドの宝」。デリーからバラナシやジャイプールなど7都市を回り、デリーに戻る7泊8日の「インドの全景」。そしてムンバイを出て7都市を周遊し、デリーに至る7泊8日の「インドの歴史」と、デリー発ムンバイ着の7泊8日「壮麗なるインド」だ。
この旅では、アグラやジャイプール、ビカネール、ジョドプールなどを訪れる「壮麗なるインド」に参加した。
旅のあいだの基地になるキャビンは、4カテゴリー制。もっとも小さいのは、1車両に4つの客室が設けられた「デラックス」。次いで1車両に3室の「ジュニア・スイート」、1車両に2室の「スイート」、1車両をまるまる使った「プレジデンシャル・スイート」。全室にシャワーとトイレのユニットが付いていて、スイートとプレジデンャル・スイートにはバスタブもある。
最長で24両編成になるうち、たった1車両しかないプレジデンャル・スイートに滞在していたのは、フランス・トゥールーズから来た72歳の夫と66歳の妻。タイ、ベトナム、カンボジアを約2か月かけて歩き、ここインドで旅を締めくくるという。妻が45歳で初めての結婚を決めたときのプロポーズが「きみに世界を見せてあげる」。その約束を果たすため、1年のうち約5~6カ月を旅にあてている。プレジデンャル・スイートを予約したのは、約半年前。予約は、広いキャビンから埋まっていくそうだ。
旅先ですれ違うだけの一期一会の気安さゆえか、出会う人から、思いがけない人生の深淵をのぞかせてもらうことがある。この夫妻もそうだった。「せっかくだから部屋をすみずみまで見て行くといい」。そう言って招き入れてくれた。
ちなみに、滞在4日めにして鷹揚にキャビンを撮影させてくれたのは、専属のバトラーが、いつも客室を整えてくれるから。宿泊先のデリーのホテルで送迎車にスーツケースを預ければ、バトラーが荷ほどきや荷造りをしてくれて、乗客は身ひとつで動けばいい。
しかし…。生来の貧乏性が顔を出したのか、25歳の男性バトラーに靴下や下着までお任せにするのは気が引け、結局自分で荷物の始末をした私。一生、富豪にはなれないな。ライフスタイルの違いをまざまざと見せつけられ、なんとなく納得した。
■取材協力:インド政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。