私の翻訳文学への関心はこのように、幼いころのストーリーの濫読(らんどく)に起源があるようです。そしてこのところの私の趣味は、ロザムンド・ピルチャーの若いころの作品の翻訳です。大作『シェルシーカーズ』や『帰郷』とは一味も二味も違って、シチュエーションと会話から伝わってくるユーモアが利いていて、現代版の軽快な『じゃじゃ馬馴(な)らし』なのです。いまは生活のリズムとして、ああ、またストーリーに帰ってきたと、パソコンに向かっています。
【プロフィル】中村妙子
なかむら・たえこ 大正12年、東京生まれ。東京大学西洋史学科卒。昭和23年に最初の訳書『銀のスケート』を出して以来、今日まで約300点を手がける。主要訳書にアガサ・クリスティ、C・S・ルイス、ロザムンド・ピルチャーの作品、児童書多数がある。最近の仕事にロザムンド・ピルチャー『双子座の星のもとに』(朔北社)、フランシス・バーネット『白い人びと』(みすず書房)、アガサ・クリスティ『厭な物語』(文春文庫)など。