【書評】『北極男』荻田泰永著 (1/2ページ)

2014.1.13 16:06

 海氷に生きる場所を求めて

 冒険家は人の生き方を思索する哲学者である。この本を読んでそんな思いを強めた。

 著者の荻田泰永は悩み、苦しむ。自分が生きているという実感が持てずに「大学生活にこれ以上、時間とお金を費やすのは無意味だ。人生を少しでも前進させたい」と3年生のときに大学を退学する。

 半年後の1999年7月21日、たまたま見たテレビ番組でひとりの極地冒険家を知り、北極に憧れる。北極の冒険はマイナス40度の中を重さ100キロ以上のソリを引きながらひたすら歩き続ける。凍傷から手足の指を切断しなければならなくなったり、ホッキョクグマと遭遇したり、常に危険と背中合わせだ。

 それでも荻田はその冒険家の企画した北極の旅に参加する。初めての北極に「生と死がとても近くにあり、自分が生きることに一生懸命になれる場所だ」と悟る。

 冒険家となった荻田はカナダ北極圏の単独徒歩、犬ぞりによるグリーンランド縦断など13年間に12回も北極を旅してきた。この冒険をまとめ上げたのが本書である。

テントが飛ばされたら凍え死んでしまう

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