風邪やインフルエンザの予防には、せっけんを使った十分な手洗いが大切だ【拡大】
規制必要か検討
せっけんは日常的に使うものだけに健康への影響は気になる。化学物質に詳しい独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)の竹田宜人調査官は「長年の使用実績があるトリクロサンに発がん性は認められておらず、急性毒性も非常に弱いことが分かっている。今回のFDAの対応は最近の研究で新たな毒性が指摘されたことに対して規制の必要性を判断するため、詳細な報告をメーカーに求めたのだろう」と指摘する。
FDAは今後、トリクロサンなどを含む抗菌せっけんを使った場合の殺菌効果(ベネフィット)と、ヒトに対する安全性(リスクの程度)を見極めたうえで、「抗菌」をうたって販売してもいいかを決めるとみられる。
抗菌せっけんで洗うのと普通のせっけんで洗うのではどの程度の違いがあるのだろう。
花王は平成11年、ひき肉をこねた手を普通せっけんと薬用せっけんを使い、実態に近い条件(泡立て3秒、すすぎ8秒)で洗った後、手に残る大腸菌群数を調べた。その結果、普通せっけんでも手に付いた大腸菌群の95%を洗い流すことができたが、薬用せっけんの方がさらに殺菌除去効果が高く、手に残っていた菌数は普通せっけんの半分以下だった。
ただ、日本石鹸(せっけん)洗剤工業会は「薬用せっけんさえ使えばいいというのではなく、ていねいに手を洗うことこそが肝心」としている。